ISO9000によって、下請企業の選別に生き残り、
更に大きく飛躍
施されるよう希望します。」 ……という内容だった。
勘のいいS 社長は、これは「下請けの選別だ」と直感した。そしてさっそくISO につい
ての情報を一週間で収集した。
しかし、本を2~3 冊読んだが、よく判らなかった。そこで知人から聞いて、更に実際に
ISO を指導している人をさがし、その人に話しをきいてみた。
約4時間、詳しい話をきいた。根堀り葉掘り。
よし、やろう!
S 社長は話を聞き終わって、すぐそう思った。
S 社長は 「ISO はややむずかしい部分もあるが、我々のような中小企業に向いてい
るものだ」 と思った。
それは…
他の中小企業同様、我々クラスの会社は、優れた技術力、品質の高い製品づくりは
できる。だから、ここまで生き残っている訳だ。
しかし、その技術を高める、或いはコントロールする管理技術が殆どなにもない。
人が辞めれば、又、一から教育しないといけない。仕事の仕方があるようでない。又、
必要な図面や標準書がいつも使える状態になってない。
こうした事は、管理の技術、システムが無いからだ。この辺を直さなくては、強い会社
にはなれない。つまり、生き残ってゆけない。
こう考えたS 社長は、すぐさまISO をスタートした。お金がかかる。全部で
600万円くらいになる。今年の利益はゼロになる。しかし、ひるまなかった。
10ヶ月で本審査をパスした。残業で品質マニュアルをつくる日が月に4~ 5 日発生し
た。社員から苦情がきた。
しかし、S 社長は 「うちの会社が生き残る方法は、今のところ、これしかない!
頑張ろう!」と激励した。
そして、親会社は、C 社がISO をとったという連絡を受けて、半年に一度の監査を省
略すると連絡してきた。
親会社からの発注減は10%で収まっていた。他の下請け同業者は30%~40%ダウ
ンしているときいていた。
30%~40%受注が減ると、会社の資金繰りがおかしくなってくる。信用保証協会の融
資を申し込む企業が増えていると銀行からきいた。
同時に以前からやっていた、5S 活動も前進した。
※ 5S とは 整理、整頓、清潔、清掃、躾の
頭文字=S をとって名づけられたもの
品質管理の最もベースとなるノウハウ
それから半年後、同業者の下請企業1社が不渡りを出し倒産。更にもう1社は廃業し
た。
いずれも、C 社と歴史、技術力等、同レベルの企業だった。
社長はこの話をその日の朝礼で全社員に話した。そして、我社が生き残っているのは、
ISO のおかげだ。そして、深々と頭を下げた。
「皆頑張ってくれて、有難う!」
その後S 社長は、社内の教育をコンサルタントに頼み、月2回指導してもらっている。
そうした改善を続ける中、S 社長はこの言葉が、大変気に入っている
「凡事徹底」
当たり前の事をちゃんとやる……シンプルなコンセプトだが実はこれが出来そうで、
出来ない。
又、全員が出来れば、見違えるように成果(品質や納期、コスト)が出る。
当たり前の事が出来て、難しい事も生きるのだ。
難しい事だけしていればよい…という考えは全く間違いなのだ。
例えば
部品の加工をするとき
・ 設備の点検を、点検要領に従って必ず行うこと
・ 必要な抽油や、刃具の交換は、予め決めた間隔で必ず行うこと
・ 月1 回は、設備をバラして徹底的にピカピカに磨く
等々、やれば誰でも出来る事を実行する。
この点をベテランの技能者に徹底するのが最も大変だった。要領のわかっているベテ
ランは、基本を省略することがある。結構ミスが発生する。しかし、誰も注意しない。
これを直すのに、うってつけのキーワードだった。
クレームは大幅に減る
何故なら、内部監査員制度というISO の仕組で、半年に1回ペースで職場の監査を社
員がやり、問題があると「是正勧告」が職場のリーダー宛に出される。
1 ヵ月以内に対策をしなければならない。強制的に。
受注先が拡大
今迄主要10社と取引していたC社は、このISO をきっかけに、他の大手企業からも仕
事の依頼、打診が増えていった。
そのとき、新規の取引先に行って、社長はISO を活用してどのような仕事の管理をし
ているかを、自社の品質マニュアルで詳しく説明する。
すると、先方は 「じゃ、お宅に頼みます」 と言う事が多くなった。
業界の不況は依然続いているが、C 社はコストダウン目標も毎年達成している為、収
益は改善している。
今、C 社に同業社の見学者が、月に2~3社来るようになっている。いずれも、下請企
業の社長だ。皆、何かを吸収しようという思いだ。
S 社長は、一通り工場を案内した後、言う。
設備や機械は、今、廃棄する会社が多いので、中古の良質のものが安く買える。しか
し、… そんなものより大事なものがある。
それは、「自社独自の管理システム」です。これは買うことは出来ない。社長自らがつ
くるしかない。
そのとき、スタンダード(標準)モデルとなるのが ISO です。
<コンサルタントの目>
1. ISO は自社の為にやるもの、と肝に命じる
2. 新しいシステム、方法、技術は必ず、取り組むべきかどうか検討すべき
3. 「凡事徹底」…至言である
4. 技術の強い会社は、管理が弱い? 管理を強化すれば、すべてが強くなる
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