| 大手自動車メーカーホンダの保安部品の製造を永年手がけているＮ社は２１人の従業員がいた。
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メーカーから見ると孫受けの立場。仕事は拡大している。国内よりも輸出が好調なのだ。
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しかし、メーカーの「安全」と「環境」への要求は年々厳しくなる一方だ。
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吉沢社長は二代目。仕事は順調なのだが、悩みがあった。あと、２年半で、工場のベテラン技術者が、大量退職する予定なのだ。「団塊の世代」である。
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ここ３年、工場には、何台もの大型機械を設備投資した。累計５千万円以上にのぼった。
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定年を延長することは可能だ。しかし、こちらが残って欲しい優秀社員は、待遇次第で、他に移る可能性がある。
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今、この業界に限っては、“ミニ人手不足”が発生しているのだ。この状況に社長は、既にメーカーからも要請のあるＩＳＯで解決できないか、あるコンサルタントに相談した。
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可能性はある。しかし、うまくゆく保証はない。５分５分だ。
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吉沢社長は考えた「５分５分ならやる価値はある」 「よし、やろう」
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１． ベテランに、プライドに見合う立場を保証し、且つ相応しい待遇も与える。
２． ベテランの仕事のやり方を会社として 「トレース」＝伝承する。
３． 新人を３名採用し、中堅をベテランがトレーニングし、２年で技術継承する。
４． ベテランが技術の伝承を終えたら、更にレベルの高い（高付加価値の）仕事をベテランに担当させる。
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社長の命名した制度の称号だ。５人の技術者が任命された。任命式は、盛大に行った。任命書を１人ずつ手渡した。
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２年以内と言う目標が示された。仕事のマニュアル化とその実地指導。Ｉスキルマップ、テクニカルレビューなどＩＳＯの手法は、様々活用された。
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いままで、“メーカー指定”の標準書が現場手順の中心だったが、独自の「スキル手順書」が作成された。
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マイスターが説明し、その内容を中堅社員が「ドキュメント」として手順を作成していった。その「手順」を元に、実地指導がマンツーマンで行われた。
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１年後、成果が出てきた。指導を受けた中堅社員のスキルの精度は、マイスターの８５％のレベルまで達した。勿論、最終仕上げと出荷検査はマイスターがおこなった。
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現場では、親子ほど年の違う“ペアー”が、遅くまで議論や質問を戦わしていた。手順書は中堅社員がパソコンで文書化した。
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月２回、技能検討会が行われ、会社としての「基準要領」が作られていった。総数３７枚の詳細な手順書が完成した。
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２年後、マイスターは、５人の「弟子」の養成に成功した。Ｎ社の「団塊世代退職問題」は、進化した形で解決した
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